Source BioScience社で行われているPhage検査試験
□I.M.A.G.E. cloneに見られるPhageコンタミネーションについて
以下、Source BioScienceから公開されている内容です。
(Joint statement of the UK HGMP Resource Centre, Hinxton and the Resource Centre/Primary Database (RZPD), Germany)
I.M.A.G.E. cloneとEST databaseは、研究機関において欠かすことのできないものとなりました。私たちthe Resource Centre of the German Human Genome Project 、RZPDそしてthe UK HGMP Resource Centre Hinxtonでこれらを管理し、その数を増やしてきました。しかし最近私たちはそのI.M.A.G.E. cloneの一部に、bacteriophage (coliphage T1)によるコンタミネーションを確認しました。コンタミネーションは両実験室で同じクローンに確認されており、コンタミネーションは別の場所で発生したものであると考えられます。Phage T1 によるコンタミネーションはすばやく他のE.coliに広がる可能性があります。私たちはコンタミネーションが起きる可能性がある工程を最小限に抑えてI.M.A.G.E. cloneを出荷してまいりました。I.M.A.G.E. cloneを使用されている方はPhageコンタミネーションの可能性について十分に考慮されており、実験室では分子生物学的知識に基づいた、適切なコンタミネーション対策をされていることと思います。コンタミネーションを起こした部分は既に配布用のI.M.A.G.E. cloneから取り除いております。また、他のクローンもすべて出荷の前にPhageコンタミネーションの検査を行い、その結果をお客様にお伝えしております。クローンにコンタミネーションが起きていないと判断された場合、直接お客様へお送り致します※。ご注文されたクローンをお受け取りの際にはこのPhageコンタミネーションのお知らせを前もって確認するようにしてください。
※非冷蔵品を国内のお客様がご注文の場合は、一度ダナフォームで受け取ってから出荷しております。但しクローンの入ったチューブの開封は一切しておりません。
Chris Mundy DPhil
Biology Manager
UK HGMP Resource Centre
Dr. Guenther Zehetner
Scientific Director
Resource Centre/Primary Database of the German Human
Genome Project at the Max-Planck-Institut for
Molecular Genetics
□The I.M.A.G.E. Consortiumからの発表(1998/9/25)
The I.M.A.G.E. Consortiumの販売店は、LLNLと平行して広範囲にわたる検査を行いました。PCRやシークエンス解析だけではなく、溶菌試験も行いPhageコンタミネーションの範囲を特定しました。その結果、最初に作られたセットはコンタミネーションを起こしていないことがわかりました。今後はこのプレートのレプリカからすぐにクローンを頒布できるようになります。私たちは再発防止のために全ての研究室の作業工程で、より厳重な無菌操作方法を行うようになりました。また宿主をPhage耐性E.coli株に変更しました。研究者の方々には大腸菌クローンを扱う際の十分な注意を呼びかけると共に、今回の騒ぎで大変なご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。
□HGMPの方針まとめ
- 新たに追加されるI.M.A.G.E.クローンにPhageコンタミネーションの検査を行い、コンタミネーションの確認されたものは除外します。
- 注文のあった全てのI.M.A.G.E.クローンをTop Agarose Assayで検査します(Phage検査試験)。
- 試験の結果コンタミネーションが確認されなかった場合は出荷となります。ただし、T1 phageコンタミネーションが無いことを100%保証するものではありませんので、クローンの取り扱いには十分な注意をお願い致します。
- 試験の結果コンタミネーションが確認された場合は使用者に結果が報告され、コンタミネーションがあることを了解した上でそのクローンの出荷を望まれる場合に限り、出荷を致します。
□Phage検査試験
この試験はphage感染性のE.coliが含まれるアガロース層を使用して行います。このアガロースを標準寒天培地の上層になるように塗ります。この上層アガロースに植菌したクローンにphageが存在する場合、培養後に上層アガロースのE.coliが溶菌されます。
□上層アガロース(phage感染性E.coliクローン)の作製方法
大腸菌を含む上層アガロースを作製するためには、試験前日にphage感染性E.coliクローンを培養する必要があります
(Source BioScienceの報告例によるとE.coli TG1、DH10B、JM101で成功が確認されています)。
ネガティブコントロールを同時に試験にする場合は、phage耐性を持つQ358を使うことをお勧めします。
□大腸菌を含む上層アガロースの作成方法
- 必要な数のPBAトレー(11×7cm)またはQトレー(22×22cm)に抗生物質を含まないLB寒天培地を注ぎ、固める。
- 上層アガロースを注ぎやすくするため、寒天培地を37℃で最低1時間温める。
- グリセロールを含まないLB培養液500mlに4gのアガロースを加え、上層アガロースを作製する(0.8% アガロース)。アガロースが溶けるまで電子レンジで加熱し、45℃にセットした恒温槽に入れる。温度が高すぎると大腸菌が死んでしまうため、少なくとも30分間恒温槽に入れ、完全に45℃で安定するようにする。
- 上層アガロースが45℃になった時に11.25mlの大腸菌培養液(上記参照)を入れ、よく撹拌する。
- 45℃に保ちながら上層アガロースと大腸菌の混合溶液を、Qトレーを使う場合は40ml、PBAトレーを使う場合は10mlファルコンチューブに分注する。
- QトレーまたはPBAトレーをインキュベーターから取り出したらすばやく安全キャビネットの中に移し、標準寒天培地を全て覆うように上層アガロースをファルコンチューブから注ぎ込む(注:上層アガロースはすばやく準備する)。キャビネットの中でプレートを開け、少なくとも10分は放置し乾燥させる。
- プレートをすぐに使わない場合は、ラップで包んで使用するまで4℃で保存する。(その日のうちに使用して下さい)。
- 検査するクローンを滅菌したチップを使って植菌する。
- 植菌したプレートはパラフィルムで封をした後ラップで包み、37℃で一晩培養する。培養後に大腸菌の溶解が確認された場合、phageが実験室全体に広がるのを防ぐため、そのプレートは開封しない。
□Phageのポジティブアッセイの結果例
□使用器材
□クローン培養用
- 滅菌済み100ml三角フラスコ
- グリセロールを含まないLB培養液
- 上層アガロースと大腸菌の混合溶液作成用のphage感染性E.coliグリセロールストック
- E.coli strain e.g. TG1, DH10B or JM101 (Stratagene)
- コントロール用phage耐性クローン
- Q358 (DSMZ)
- Gilson pipette (5-50?l) and sterile tips
- 37℃ incubator
□下層アガロース作成用
- PBA culture plates (CONS1001)またはGenetix Q-trays (X602)(検体量にあわせて選択)
- 抗生物質を含まないLB寒天培地
□上層アガロース作成用
- グリセロールを含まないLB培養液
- Ultrapure Electrophoresis Grade agarose (GIBCOBRL, 540-551OUB)
- 電子レンジ(Matsui M183BT)
- 恒温槽
- Falcon 15ml conical tubes (2097)またはFalcon 50ml conical tubes (2098)(検体量にあわせて選択)
- ラップ